「がんばる企業のご紹介」第7回目は…
愛知県が主催する「輝く女性ソーシャルビジネスプランコンテストあいち2018」において、愛知県知事賞と愛知県信用保証協会賞をW受賞されたかたをご紹介します。
【ビジネスプラン:駆除した鳥獣のジビエとしての有効利用】
(概要)
深刻な農作物の鳥獣被害を受け、駆除したジビエの有効活用のためカフェを経営する傍ら、さらなる有効活用策として、障がい者就労支援施設を通じペットジャーキーを製造・販売することで、埋設率の抑制のみならず、障がい者の新たな雇用創出・賃金の向上を図る。
(評価のポイント)
既にジビエカフェを開業し、数少ない女性ハンターとしても、深刻な農作物の被害状況について情報発信し続けている。その被害の深刻さから、本取組を支援する者も多く、社会問題の深刻さ、ビジネスプランの実現性および起業家の情熱が高く評価された。
代表 |
清水 潤子 |
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業種 |
飲食業 |
創業年月 |
平成29年12月 |
店舗名 |
山里カフェMui |
住所 |
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営業時間 |
不定休(※ランチは予約のみ) |
ホームページ |
【取材日】H30.10.15 【取材者】女性創業者支援チームアイリス
豊田市の奥深い山間地である足助地区で、数少ない女性ハンターとして、鹿やイノシシなどの害獣を駆除しながら、駆除したジビエ食材を「猟師めし」として提供する「山里カフェ Mui」を経営しています。
フランス料理では高級食材として扱われるジビエ料理ですが、親しみを感じてもらうため、安心・安全かつリーズナブルな価格で提供しています。お子様向けには、調理師としての技術と経験を活かして、イノシシ肉のハンバーグをメインとしたキッズプレートも用意しています。
また、ジビエ料理だけでなく、四季折々に表情を変える景観や、女性ハンターならではの経験談なども一緒に味わっていただければと思っています。
店名の「Mui」は自然のまま、あるがままという意味
5年前、まだ私が刈谷市に住んでいた頃に、豊田市の中山間地にお米作りの体験に来た時のことです。偶然、田んぼをイノシシが横切ったとき、隣にいた年老いた男性が私に向かって「なぁ~や、イノシシ取ってくれや」と言ったのです。地元の人でなくて、よそ者の私にも頼まなくてはいけないことに、事態の深刻さを認識しました。それから資格マニア(笑)でもある私は、狩猟免許を取得し、中山間地に足繁く通うようになりました。
時を同じくして、害獣被害についても調べてみると、愛知県では野生鳥獣による農作物被害額は年間4.5億円で、この被害の半分は鹿やイノシシによるものだったのです。改めて被害の深刻さを痛感するとともに、猟師の高齢化によりハンターが減少し、必要十分な駆除を行えないという現実も知ることになりました。
そして、猟師として有害鳥獣駆除に関わるようになると、鹿やイノシシを捕獲する機会も増えました。捕獲した鳥獣の約9割は活用されず、埋設や焼却処分されてしまう現実があります。そこで、「捕獲した生き物のいのちをどうやったら活用できるか」、また猟師として、「廃棄率の多さや獣害被害の深刻さをどうしたら伝えることができるか」の問いに対する答えとして、平成29年12月に「ジビエカフェ」をオープンすることになりました。
店内には囲炉裏があり、落ち着いた雰囲気
「ジビエカフェ」を集いの場として、ジビエ食材を味わいながら人が集う場所を提供することで、私が最も伝えたい「廃棄率を下げたい、奪ったいのちをきちんといただく」ことを、たくさんの方に知ってもらうきっかけとなっていることです。
また、幸いなことに、数少ない女性ハンターとしてメディアに注目されることも多いです。自らが広告塔となって、今現在、私が向き合っている地域の課題とその解決に向けたチャレンジを知っていただきたいと思っています。
何よりもこれまで全く経験のないビジネスプラン、収支計画などを作成することでした。当初、「起業」はカフェをオープンして私の想いを伝える手段に過ぎないとだけ考えていましたが、計画作成を指導したコンサルタントからは、「事業を成功するためのキャッシュポイント(収益を生み出す機会)がない!」、「起業について真剣に考えていない!」などの厳しい指摘がありました。自分の想いとの乖離から、時には激しい口論になることもありましたね。それでも事業を開始した今では、しっかりとしたビジネスプランを立てる意義も理解し、厳しく指導していただいた先生方にも感謝できるようになりました。
私の使命は、廃棄率を減らすこと、そして害獣駆除を通じて地元に笑顔を届けることです。創業した後であっても、ブレることはありません。ジビエ料理でたくさんの人たちに感動を与えるため、素材の良さを感じられるよう味付けを工夫しています。また、私の持論には、女性の集まるところに男性が集まるといったことがあります。ハンターの若返りを図るために、まずは私自身に興味を持ってもらい、女性ハンターを増やすことができるように情報を発信し続けたいと考えています。
いきいきと楽しそうに調理する清水さん
ジビエは駆除後すぐに解体しないと食材として使えません。現在、愛知県内には解体施設が5か所しかないため、食材の流通に限界があり、普及の足かせとなっています。
そこで自前の解体処理施設を開設するため、クラウドファンディングを立ち上げ、私の活動を支援していただける方を募集しました。募集期間は終わり、無事に目標金額を達成することができました。現在、自宅横に解体処理施設を建設中であり、12月頃には稼働する予定です。ジビエ料理をより多くの人に届けたいという夢に向かって着実に歩み始めています。
また、ジビエを利用したペット用ジャーキーの商品化も目指しています。就労支援施設が製造を請け負うことで、障がい者の雇用確保と賃金上昇に繋がることを期待しています。商品化も大詰めの段階で、近々試験販売を行うことを予定しています。支援者の協力を得ながら実現していきたいと思います。
優れたビジネスプランがあるなかで、まさか自分が受賞できるとは思いませんでした。愛知県信用保証協会については、名前を聞いたことがある程度で、具体的にどのような方たちなのかはわからなかったので、あとで調べました(笑)。
そして、とても光栄に思う反面、様々な事業が急ピッチで進んでしまうかも知れないといった不安も正直感じています。それでも多くの方にアピールできたこと、評価していただいことは大変喜ばしいことです。
「やりたい!」と思うことがあれば、その目標に向かって、まずは一歩踏み出してほしい。そして自分が決めたことは、最後まで信念を貫いてほしいと思います。
そして、苦手なことがあれば誰かに助けを求めればいいし、一生懸命になる自分の姿を見てもらえれば、手を差し伸べてくれる人がきっといるはずです。
そう、私が初めてビジネスプランを作成したあのときのように・・・。
アイリスと取材日が重なった愛知県職員と一緒に
☺アイリスからひと言
今回は、愛知県知事賞と愛知県信用保証協会賞のW受賞おめでとうございます。
思い描かれたビジネスプランが大いに評価された今回の受賞に関わることができ、大変嬉しく思います。地域の人々に獣害駆除による安心とジビエ食の楽しみを提供していかれる清水さんのさらなるご活躍を楽しみにしています。